はやぶさ

昨夜、「はやぶさ」が7年ぶりに地球へ帰ってきた。何処かで生中継するところはないかと探したが、結局何処の曲も中継無し。今日今夜、この時の日本におけるニュースでこれ以上大事なテーマはないはずじゃないのか。

仕方なくNASAやJAXAのネットやツィッターを駆使して無事帰ってきたことだけ確認する。本体が燃え尽きた証拠の火球が見えたとの話題があちこちで流れていたが、その後NHKのニュース画像を見て思わずまた泣けてきた。

シールドされたカプセルを無事に切り放し、ようやく7年間の永い永い役目を終えたとばかりに、みずからはバラバラの光の欠片となって夜空へ消えていく。大切に大切に産み落とされた子どものようなカプセルは、まるで未来を載せているかのように一筋のくっきりとした光の帯を残しながらその脇をまっすぐに進んでゆく。

数々のトラブルに見舞われ、それでも決して諦めなかった「はやぶさ」プロジェクトは、これも地上とクルーの連携で危機を脱出して帰還したアメリカの「アポロ13」のようだとよく話題に上る。しかし、3億キロ彼方の「はやぶさ」には人は乗っていなかった。

はやぶさ ただ、類希なるエンジニアたちの想像力の結晶がそこにあっただけだ。そしてその想像力が故に、瀕死の重傷を負いながらも、地上では考えもつかなかったようなあの手この手の運用を可能にしていった。打ち上げ前にこんな運用をすることになるなど考えていたエンジニアなど一人もいなかったのじゃないだろうか。

システムを知り尽くしたプロの技術者集団。NASAの数分の一の予算で打ち上げられた「はやぶさ」。そのプロジェクトの姿はアポロ13よりも子どもの頃読み漁っていた「ゼロ戦」や「隼:はやぶさ」など、日本の名機を生み出した技術者の話のほうを思い出させる。

職人が手塩にかけて作り出すもの、あるいは使い込む道具、それらは永い永い時を人とともに過ごすことで、既に単なる機械ではなくなってゆく。世界初の小惑星探査という科学的意味以上に、一般によく知られるようになった「はやぶさ」はその象徴だ。

小惑星イトカワに到着して送ってきた綺麗な地球の映像は鮮烈に覚えているが、帰還時、燃え尽きる寸前にエンジニアたちの意向で一旦向きを変え、最後の地球の姿をその目に焼き付けるように撮像された、かすれがちなモノクロの地球の画像。

泣けるなあ・・・
■JAXA in※WPA : Woomera Prohibited Area
日本時間6月13日19時51分に「はやぶさ」は無事カプセルを分離し、日本時間6月13日22時51分頃には大気圏に突入しました。 2003年5月9日にM-Vロケットで打ち上げられてから約7年間、イトカワに着陸し、サンプル採取作業を行い、再び地球に帰還するという難事業を、幾多の困難を乗り越え成し遂げることができました。

また大気圏に再突入した「はやぶさ」カプセルについて、ヘリコプターにより捜索した結果、日本時間6月13日23時56分にWPA内の予定区域内においてカプセル本体を目視により発見しました。 なお、カプセルの回収作業は、日本時間6月14日午後に行う予定です。

これまで応援していただいた皆様に感謝いたします。

Hayabusa_JAXA@twitter [@Hayabusa_JAXA]

はやぶさ君の冒険日誌2010
[http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/fun/adv/index.shtml]
過去記事:はやぶさ
[http://www.kurumejin.jp/archives/51048553.html]
過去記事:「祈り」-小惑星探査機 はやぶさ の物語-
[http://www.kurumejin.jp/archives/50490170.html]
過去記事:3億3千万キロ彼方との会話 32(びっと・ぱー・せこんど)
[http://www.kurumejin.jp/archives/50199346.html]
過去記事:がんばれ、はやぶさ!祈ってるゾ
[http://www.kurumejin.jp/archives/50130303.html]
過去記事:3億キロ彼方からの帰還
[http://www.kurumejin.jp/archives/50114177.html]

JAXA|小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」
[http://www.jaxa.jp/projects/sat/muses_c/index_j.html]


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