原発と「はやぶさ」[〜Newsweek .February 23,2011〜] 画像は2月に買ったNewsweek日本版2月23日号の表紙。偶然だが、この号の特集は「原子力とエネルギーの未来」で、今まさに危機に直面している原発についての世界各国の現状が特集されている。

偶然というのは、この号を買った動機が、別の特集「エジプト革命の舞台裏」を読む目的だったからだ。FaceBookなどSNSを媒体とした一連のアラブ諸国の革命的動きに、日本のメディアにはない見方に興味を持った。

若い頃は、世の中というものはずっと変わらずに続いていくものだと思っていた。これは戦禍のないクニ、ニッポンで生活していたからかも知れない。私の世代はどちらかというと、安保闘争など学生運動直後の世代だ。おかしいと思うことは世の中になかったわけではなく、どうしたらもっと良くなるんだろうと思ってはいても、大筋では変わらぬものが現実社会なんだと思っていた。

はじめて驚いたのは、ソ連の崩壊後ベルリンの壁が壊れたとき。TVの画面に映される壁の上に立ち、大きなハンマーで壁を壊している人々を見せつけられたとき、初めて世界は戦争でなくても変わることが出来るのだと思った。

今回のアラブ社会のこともそういった意味で注視していたのだが、そんなこんなも震災でぶっとんでしまった。巨大なTSUNAMIによる直接的ダメージもさることながら、それによって引き起こされた福島原発のトラブルがアラブの動きよりも世界の注目を集めている。

M9クラスの地震や高さ10mを超すTSUNAMIという「想定外」のトラブルで極めて深刻な事態に陥ったかに見える日本の科学技術だが、一連のニュースを見ながら、個人的には小惑星探査機「はやぶさ」のことを思い出していた。

往復60億キロを旅して感動的な結末とともに、小惑星「イトカワ」の粒子を地球へ運んできた「はやぶさ」だが、打ち上げからずっと見てきたその行程はまさに「想定外」の連続だった。

人間の手を直接下すこともできない30億キロの彼方、しかも様々なパーツが故障に見舞われ使えない。搭載された電池も、エンジンも、何一つ満足に動かすことが出来ないのに、後付けで考えたアイデアを駆使しながら奇跡の帰還を成し遂げた「はやぶさ」ミッション。

「後付けで」と書いたが、様々な幸運にめぐまれたということもありながら、要は決して諦めなかったスタッフのねばりと、「後付け」を可能にする技術の懐の深さがあったことがミッションの成功へと繋がったのだと思う。

「はやぶさ」の偉業にも感動するが、個人的にはその科学技術の懐の深さにこそ深い感銘を受ける。

瀕死状態の原発とエネルギー事情。TVの記者会見に映る○電のお偉いさん?や訳も分からずそれぞれの思惑?でニュースを流し続けるメディアはともかく、この原発を作ったニッポンの技術者のプライドと懐の深さを今は注視している。

過去記事:Welcome home... おかえりなさい&ありがとう はやぶさ
 [kurumejin.jp/archives/51051056]


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