
6月。筑後川に浮かぶ小舟には、曲の構想を練る團、本間、龍頭*らの姿があった。まさにこの時から名曲「筑後川」の胎動が始まったのだ。
筑後川は日本有数の河川だが、楽曲から連想されるのは目に映るものをはるかに凌駕する雄大なイメージだ。川に浮かべた小舟からのどんな光景が、類希なる時の才人の想像力を掻き立てたのだろうか。
さて、詩人丸山豊の詩は團伊玖磨の元に届けられたが、なかなか曲が出来上がってこない。本間の指示でホールの日程を複数押さえていた米替だったが、それもぎりぎりのところまで来ていた。
本間はいても立ってもいられず東京の團氏の元へ直接会いに行き催促する。楽曲の最終章が出来上がってきたのは発表の4日前だったという。公演前の17日間、合唱団は一日も休まず猛練習を重ね、ようやく本番に漕ぎ着けた。
12月20日。久留米音協合唱団第5回定期演奏会「合唱組曲・筑後川」指揮/團伊玖磨・本間四郎。その後実に62版を重ねるという大ベストセラーとなり、全国の合唱団で歌い継がれていく合唱組曲「筑後川」その記念すべき初演だった。初演の様子を当時の地元紙はこう書き記している。
「…人間の愛の行程にも似た筑後川の流れを静かに、流れるように、高らかに歌い終わると、感激ですすり泣く聴衆が出るなど…ようやく九州にも本格的なオリジナル曲を持つ合唱団が生まれたようだ」
*…龍頭文吉郎:久留米音楽文化協会理事長
■ タイトル解説☆
TRAVERSE【トラバース】登山で縦走路にある山の頂上へ向かわず山腹を横ぎること。
■ カルキャッチくるめ
[http://www.culcatch.jp/]
※この連載はカルキャッチくるめ通信(December 2006-January 2007)への掲載記事です。
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