

私事だが、信心厚かった私の祖父はこの梅林寺の禅僧を自宅へよく招いていたらしい。私はほとんど覚えていない。それに倣ったわけではないが、数年前通りかかる雲水に声を懸け、心ばかりのお布施を渡し頭を下げた。以来、毎月立ち寄っていただけるようになった。
信心からではない。何でもかんでも便利さや合理性を追求する今の時代に、昔と変わらぬ草鞋ひとつで修行を続けるその心根に素直に頭を下げている。実際、初詣など神社にお詣りに行くときは、だいたい下心丸だしでいろいろとお願い事を呟くが、修行中の雲水に頭を下げるときは、不思議と無心だ。
でも今回ばかりは「娘をよろしく」と云うべきだったかなぁ(苦笑)
■江南山梅林寺

[福岡県久留米市京町209]
▼数年前に梅林寺に取材に行き記事にしたのを思い出した。興味がある方はご高覧下さい。
■禅道場 江南山梅林寺 © East Side Street Kurume,February 2000
江南山梅林寺。臨済宗妙心寺派、九州の代表的な修行道場として知られる古刹で、また久留米藩主有馬氏の菩提寺でもある。
絹本著色釈迦三尊像(重要文化財)のほか、尾形光琳の富士山の図、長谷川等伯の屏風、狩野が描く襖絵など600余にものぼる寺宝が保存されているという。
梅林寺に預くるよっ!」その厳しい修行の様は、かなり一般的に理解されていたのだろう。幼い頃、父や母にとって言うことを聞かない子供への脅し文句は決まってこれだった。
毎月19日には府中(現在の高良山の麓あたり)からこの梅林寺まで、修行の雲水が「おおー・・・」という独特の発声で列をなして托鉢にまわる様は、一種の風物詩だった気がする。現在でも十数名の全国から集まった雲水によって、早朝3時から昔と変わらぬ厳しい禅修行が続けられている。 一石炊き、一斗炊きという大きな釜がいくつも立ち並ぶ庫裡(くり)では今も薪で粥を炊く。
社員研修や個人での禅修行をこの梅林寺で行うものも居ると聞く。が、修行は雲水と共に同じ時間できびしく進められる。 磨き抜かれた、重厚な板張りや使い込まれた庫裡の道具類の整然とならぶ様を見ると、知らず知らず背筋が伸びてくる。 ここは修行の為の道場なのだ。
最近の観光ブームで、修行道場としての寺そのものよりもこの外苑の梅がつとに有名になった。
3000坪の敷地内には約500本、30種もの梅があり、2月〜3月にかけてたくさんの人が、観梅に訪れる。見渡す限りなどという、おおげさな風情ではなく、清閑な寺外苑の佇まいに爽やかな梅の香りがいっぱいに広がり、紅梅白梅が咲き乱れる様は、心をなごませてくれるような優しい感じがする。
外苑を奥に進んでいくと、少し高台になっていて、眼下には筑後川が悠々とした川面を見せている。振り返ってみる本堂や、きちんと整備された石庭などを見ていると、観光地というよりやはり名刹としての歴史の方が重きをもって存在し、とても落ちついた気持ちにさせてくれる。
「梅林寺」という名前からして、その梅が由来のような気がするが、この外苑に現在のような梅林が整備されたのは、昭和33年のこと。寺の名前は、久留米の初代藩主有馬豊氏(とようじ)が故地丹波福知山の端厳寺を移した折、父則頼の分霊をここにうつし、その法号(戒名)梅林院から寺号を改めた、とされている。関ヶ原合戦後の元和7年という話だから、ざっと400年前の話だ。
その後、開山350年忌に際し、17世老師の英断とブリヂストン創業者石橋正二郎氏の寄付、壇信徒の献木などの協力によって現在のような外苑が整備され、多くの人が観梅に訪れるようになった。
花を愛でる観光もいろいろとあるが、早春の一日、襟をただしてこの風格のある寺を訪れるとき、外苑の梅は新鮮な香りを運んでくれるだろう。
*written by kamome
*外苑から河川敷へ降りたところに駐車場はあるが、そう広くはないので土日は出来るだけ公共交通機関のご利用を
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