
「エリアンの手記」は、1986年、日本で初めていじめ自殺事件として注目を浴びた「中野富士見中学いじめ自殺事件」を題材に劇作家山崎 哲が事件の背景にせまった衝撃の話題作だ。
新年明けてすぐに、地元劇団「PROJECTぴあ」によって公演が行われる。
「このままじゃ地獄になっちゃうよ」と遺言を残し、おばあちゃんを訪ねて東京から盛岡まで旅をしたシカガワヒロフミ君の心の軌跡。この事件は「葬式ごっこ事件」とも云われ、あろうことか学級担任までもがいじめに加担するなど大きな波紋を呼んだ。
この事件がクローズアップされてから、もう24年。現代のいじめはその手段がネットの世界まで広がり、より陰湿になったとも云われているが、必ずしもそうとは思えない。昔から陰湿ないじめはあった。ただ、様々な事件がたちどころに全国に知れ渡るようなメディアはなかったがね。
ムラハチブになるのは誰だって怖い。こればっかりは普段元気な子も、おとなしい子も違いはない。かくいう私も子どもの頃、直接手を下したことはなかったが、いじめを傍観していたことは多々あった。自分では、いじめられるほうも悪いなどと、無理矢理自分自身を納得させていた覚えもある。
正確な統計を取っているわけではないから、軽々しくは云えないが、もし本当にいじめが原因の自殺が増えているのなら、それだけ生きることにタフではなくなってきているのかも知れない。それと、ことばが軽くなってきていることも事実。
軽くなっているのは日常的に直接交わす言葉ではなく、文字として認識させることば。ブログやメールどころか、最近はより簡単な「つぶやき:twitter」が飛び交う。こういう媒体でデジタルに表示することばも文字だからこそ始末が悪い。耳からの情報は直感的に処理するが、文字を拾って「読む」作業が必要なことばは、受け取り方ひとつでなんとでも「読む」ことができる。そして、残る。
子どもの世界じゃなくともブログやMLがちょっとしたきっかけで簡単に「炎上」するのは当たり前だ。
今の子育ては基本的に「子どもを見守る」ことが大切だと私も思うが、考えてみると昔は結構、ほったらかしだった。もちろん兄弟が多いと云うこともあっただろうし、何よりも親自身が生きるために喰わせることに必死で、いちいち子どもにかまって居れなかった。
今は違う。学校の運動会ともなれば、中学や高校まで保護者が見に来るのがフツーだ。昔じゃ考えられなかった。親が行くのはせいぜい小学校までだった。よっぽど昔より今の方が親はよく子どもを見守っているとも取れるかも知れないが、はたしてどうだろう。
中野富士見中学校はすでに2009年4月より南中野中学校へと統合され新しい歩みを始めている。24年前の事件を題材にした「エリアンの手記」。今、この芝居はどんな風に受け止められるだろうか。
公演情報▼
■山崎 哲 PROFILE
劇作家、評論家。
宮崎県宮崎市生まれ。本名・渡辺康徳。宮崎県立宮崎大宮高等学校時代から演劇活動を始める。1970年、広島大学文学部中退。上京して、唐十郎の状況劇場に入団。
1971年、劇団「つんぼさじき」を旗揚げ。1979年にこれを解散し、流山児祥の「演劇団」を経て、1980年に藤井びん、竹内一郎らと劇団「転位・21」を旗揚げ。
1981年、『うお伝説』『漂流家族』で岸田国士戯曲賞受賞。1987年、『エリアンの手記』『ジロさんの憂鬱』『まことむすびの事件』で紀伊國屋演劇賞受賞。
1994年、水戸芸術館運営委員に就任。「転位・21」の活動を休止。以降は、犯罪、恋愛などに関するテレビのコメンテーター、評論活動を行う。1997年、委員を退任。
2001年、「転位・21」を再開し、2002年から「新転位・21」を率いて演劇活動を続けている。
■転位・21[www5b.biglobe.ne.jp/~tetsu21]
■ブログ 山崎哲_ひと・こころ・からだ[tetsu99.at.webry.info]
■エリアンの手記
・・中野富士見中学校事件・・
ひとはなぜ「事件」を惹きおこすのか
■期日:2011年1月15日(土) 17:30開場 18:00開演
2011年1月16日(日) 13:30開場 14:00開演
■会場:えーるピア久留米視聴覚ホール
■入場料:一般大人:前売:1,500円 当日:1,800円 高校生以下:前売:500円 当日:800円
■主催:劇団PROJECTぴあ
■問い合わせ:劇団PROJECTぴあ事務所 [TEL.050-1148-0822]
■CAST:
中村 勉也 喜永さくら 井上 照代
小能見大輔 能城芙由子 竹内 愛実
川島 潤子 森山佐知子 森岡富仁美
藤村 美幸 一路めぐり 古賀 弘子
北村 唯 中尾 健志 森岡 伸彦
■STAFF:
馬場園由美 宮田 佳苗 向田 笑子
■PRODUCTS NOTE:
【原作】山崎 哲:紀ノ国屋演劇賞受賞作品
【演出】石山浩一郎
【舞台監督】権藤元二郎
■Actor's Cafe : くるめの演劇情報誌[actorscafe.jp]
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