

5月26,27日、石橋文化ホール開館5周年記念で初演されたこのプログラムは明治・大正・昭和を歌で綴るもので、好評を博し、その後音協合唱団の主要レパートリーとして沖縄やハワイなどへの演奏旅行でも公演されていく。
沖縄がまだアメリカの占領統治下にあった昭和45年、音協合唱団は「歌う文化使節」として演奏旅行に向かう。当然パスポートを取得しての海外旅行である。本間らと共に先乗りした米替は、会場に予定されていた那覇市琉球新報ホールを下見して愕然とする。
確かに石橋文化ホール並みの設備は九州では希有な存在だったが、それにしても舞台演出のための音響・照明などの設備がまるでない。壁に簡単に並べられたブレーカー群を眺めながら途方に暮れた米替は、急遽新聞社事業部の担当者に照明助手を依頼した。
「こんにちは」
やってきたのは、バイクの後ろに彼女をタンデムさせてきた、ストローハットのお兄ちゃんだった。訝しげに思いながらも、米替は必要な器材の手配を依頼する。
「まかせてください」
本当に大丈夫か?走り去るバイクを目で追いながら、ともかく仕込みに取り掛かった。現地の募集で集まってきた4人の素人バイトを指導しつつ、悪戦苦闘しながら公演の準備を進めていく。
3月30日。かくして久留米音協合唱団沖縄公演「日本の百年を歌う」の初日がやってきた。
■ タイトル解説☆
TRAVERSE【トラバース】登山で縦走路にある山の頂上へ向かわず山腹を横ぎること。
■ カルキャッチくるめ
[http://www.culcatch.jp/]
※この連載はカルキャッチくるめ通信(August-September 2006)への掲載記事です。